住宅確保要配慮者とは?高齢者は何歳から該当するのか|大家・管理会社の実務から整理
高齢の方から入居の申込みが入り、居住支援の窓口や自治体の資料を見るとよく出てくるのが「住宅確保要配慮者」という言葉です。行政用語なので身構えますが、貸す側にとっての意味は一つに絞れます。その人が制度上の支援メニューを使える立場かどうか、そして自分がその枠に入ると何を約束することになるのかです。
住宅確保要配慮者とは——法律が名指ししている5つ
住宅セーフティネット法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律)第2条第1項が、住宅の確保に特に配慮を要する者として名指ししているのは低額所得者・被災者・高齢者・障害者・子どもを養育している者の5つです。ここに、国土交通省令で定める者と、地方公共団体が供給促進計画で定める者が加わります。
「支援を申請して認定される資格」ではありません。該当するかどうかは属性で決まり、手続きは要りません。単身の高齢者から申込みが来た時点で、その方はすでに住宅確保要配慮者です。
高齢者は何歳から該当するのか——年齢の定義は置かれていない
実務でいちばん訊かれるのがここですが、答えは拍子抜けするものです。国土交通省の制度Q&Aは「法2条の『高齢者』の定義は60歳以上か」という問いに対し、「同じ年齢であっても、心身の状態を始めとして相当の個人差があり、一律に年齢で区分することが難しいため、定めておりません」と回答しています。
つまり制度の側は、年齢の線を引くことを意識的に避けています。個別の補助制度で「60歳以上」といった要件が置かれることはありますが、法律上の要配慮者かどうかは年齢では切られていません。
貸す側から見れば、これは「何歳までなら貸してよいか」という問いに制度は答えを持っていない、ということでもあります。実際に借りられるかどうかを決めているのは年齢ではなく物件側の姿勢です。年齢そのものを条件にせず受け入れている物件がどう組み立てているかは、判断の材料になります。
法律に書かれていない人も対象になる
省令と自治体の計画で対象は広がります。セーフティネット住宅の情報提供システムが入居対象者として掲げている区分は、上記5つに加えて外国人、中国残留邦人等、児童虐待を受けた者、矯正施設に収容されていた者、困難な問題を抱える女性、ハンセン病療養所入所者等、DV被害者、犯罪被害者等、生活困窮者、保護観察対象者等などを含みます。
国土交通省のQ&Aも、車いす利用者・がん治療中の方・持病のある方・認知症状のある方について、法律や省令に載っていなくても地方公共団体が供給促進計画で定めれば対象にできるとしています。自分の自治体が何を加えているかは、供給促進計画で確認できます。
「入居を拒まない住宅」に登録すると何を約束することになるのか
制度の中心は、要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として登録する仕組みです。登録すると情報提供システムに掲載され、改修費や家賃の低廉化について自治体の補助の対象になり得ます。
登録の窓口は都道府県・政令市・中核市で、宅建の資格は不要、入居者がいる部屋でも、一戸建てでも、共同住宅の1戸だけでも登録できます。一方で賃貸借契約の当事者ではない管理会社は登録事業者になれません。耐震性については、昭和56年6月以降の基準への適合が求められます。
登録しても、受け入れる範囲は自分で決められる
「拒まない」と聞くと全部引き受ける約束に見えますが、そうではありません。国土交通省のQ&Aは次の3点を明示しています。
- 受け入れる要配慮者の範囲は、共同住宅の1戸ごとに設定できる
- 範囲は後から変更できる。ただし範囲外になったからといって、すでに入居している人を退去させることはできない
- 登録申請時に「保証人や緊急連絡先があること」を条件として付していれば、それに適合しないことを理由に入居を断ることは認められる
3点目は実務上とても大きい部分です。条件は登録の時点で決めておく必要があり、後から持ち出すものではありません。保証人を立てられない申込みへの備えは、身元保証人がいない高齢者の入居をどう受け入れるかで整理しています。
1戸で不当な入居拒否があった場合でも、他の住戸で不当な拒否をしていなければ建物全体の登録取消にはならない、というのが国土交通省の説明です。
登録住宅97万戸に対し、見守りまで備えた住宅は363戸
数字を並べると、制度が今どこまで来ているかが見えます。セーフティネット住宅情報提供システムの総登録戸数は974,614戸(2026年9月7日閲覧時点)。一方、2025年10月1日施行の改正法で新設され、安否確認と福祉サービスへのつなぎを備えた居住サポート住宅の総認定戸数は363戸(同日閲覧時点)です。
「断らない」枠は約97万戸あるのに、「日々見ている」住宅は363戸しかありません。登録制度が用意しているのは入口までで、入居後に誰が異変に気づくかは制度の外に残されている、と読むのが実態に近いはずです。改正の全体像は改正住宅セーフティネット法で大家は何が変わったか、認定制度の中身は居住サポート住宅とはにまとめています。
受け入れると決めたとき、実際に要るもの
要配慮者を受け入れると決めた物件で、実際に手当てが要るのは次の3つです。
- 家賃の担保——個人の保証人ではなく法人の家賃債務保証へ(審査に通すポイント)
- 相談先——都道府県が指定する居住支援法人は、家賃債務保証・住宅情報の提供・見守りなどの生活支援を担います(居住支援法人とは)
- 日々の安否確認——登録も認定も、これ自体は用意してくれません
3つ目は、既存の物件に後から足すことができます。見守りを賃貸側にどう置くかを先に決めておくと、受け入れの判断が「断る/断らない」の二択ではなくなります。導入の順序は賃貸に見守りサービスを導入するとき、最初に決めることで扱っています。
まとめ:制度は「断らない枠」までしか用意していない
- 法律が名指しするのは5区分。省令と自治体の計画で広がる
- 高齢者に年齢の定義はない。制度は年齢の線を引いていない
- 該当に手続きは要らない。属性で決まる
- 登録は1戸単位でも、入居中の部屋でもできる
- 受け入れ範囲と条件は登録時に自分で決める。後付けはできない
- 登録97万戸に対し、見守りを備えた住宅は363戸
- 入居後に気づく仕組みは、自分で足す部分として残っている
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